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「瀬戸内千夜一話物語」 1. 伊子茂の西家

現在、芝集落の区長さんをなさっている豊島良夫さんの覚書を連載しています。記憶をたどって書くので、用語など現在では不適切なものもあるかもしれませんがご容赦くださいとのことです。著作権は豊島良夫さんにあります。

1. 伊子茂の西家

昭和25年ごろだったと思うが、父が双従兄弟の西道子さんの家の屋根の解体に応援に行った。加計呂麻の大庄屋だった家である。

当時、300年ぐらいたった家である。その家を作った主人が、「この屋根を葺き替える時には、時代に合わせなさい。」という遺言を残してあったそうだ。

茅葺から現在のトタンか瓦に葺き替える作業だ。かなり大きな家で5日ほど行った。言い伝えによると、大工の古老がこの家を作ったときに主人は目が見えなかった。その時、「柱だけは、上下間違いのないように。」と最初から言い付けてあった。

どうして目の見えない人が材木の上下が分かるのだろう。普通、私達が材木の上下を見るのに年輪とか節穴で判断する。又、重さで6割ぐらいは分かるが、大きな材木の年輪が真っすぐで判断できないものもままある。板などになったものは、とくに難しい。

大工さんが試してやろうと思った。わざとはずせるように切込みをを入れて、柱の上下を逆さにした。

すると、依頼主は真綿を持ってきて柱を検査した。大勢の大工さん達が青ざめた。いたずらしたあの柱は分けなく見破られた。それ以後、この家の普請は丁寧に続けられ、300年と言われた家も、さらに50年、今日に至っている。

武具、家具、骨董品も多数あったそうだが、西道子さんのご意志で瀬戸内町役場が保管、管理しているそうだ。いつかは見てみたいものだ。 …父 豊島一志  (平成17年1月20日) 
by amami-kakeroma | 2006-12-22 08:39