参考 「加計呂麻島での森林伐採計画に関する申し入れ」

2010年3月26日に、奄美の環境団体から瀬戸内町長宛に提出された申し入れ書を掲載します。

                                                       2010年3月26日
 瀬戸内町町長
    房克臣 様
                                            NPO法人環境ネットワーク奄美
                                             代表 薗博明
                                            奄美の自然を考える会
                                             会長 當田嶺男
                                            NPO法人奄美野鳥の会
                                             会長 鳥飼久裕
                                            奄美哺乳類研究会
                                             会長 阿部優子
                                            アマミアートプロジェクト
                                             代表 田町まさよ

                 加計呂麻島での森林伐採計画に関する申し入れ

拝啓 平素より瀬戸内町行政にご尽力されていることに深甚の敬意を表します。瀬戸内町の特性を生かしたさらなる発展のためにご奮闘されますよう祈念いたします。

さて、奄美の環境に取り組んでいる私たちは、本年1月末以来たびたび新聞報道されている加計呂麻島での森林伐採計画について、大きな関心を持って事態の推移を注目してきました。以前から加計呂麻島の調査・観察を実施してきた私たちは、加計呂麻島は自然環境をはじめ文化、歴史を含めて奄美群島の中で貴重な存在であると認識しています。したがって、当計画は単に加計呂麻島の問題ではなく奄美全体の問題であると考え、さる2月9日に改めて伐採計画地の状況を確かめたうえで申し入れをします。

申し入れ事項

瀬戸内町町長におかれては、企業体に対して事業計画を断念するよう毅然たる態度で働きかけていただきたい。

理由

(1) 当該計画地域(加計呂麻島)の圧倒的多数の住民がたいへんな危機感を持って伐採に反対しています。町当局は、先ずこのことを真摯に受け止めるべきです。一時の感情や利害損得で反対しているのではないことは、町当局がよくお解りのことと推察しています。生活している地域に対する愛着の念、将来への展望に基づいた冷静かつ客観的な判断による反対の意思表示であると私たちは受け止めています。瀬戸内町の行政に責務を持つ町当局は、「民間と民間の契約を止める権限はない」と第三者的姿勢をとるべきではないと考えます。当該地域住民の意思を真摯に受け止め、伐採をさせない英断を下されるよう心から願っています。

(2) 伐採計画地は、リュウキュウマツ(琉球列島固有種)が立ち枯れして、イタジイを中心とした奄美本来の良好な常緑広葉樹の森へと遷移しつつある加計呂麻島での一級の森です。懸念されている松食い虫による被害がなくても、山間部にあるリュウキュウマツはいずれ常緑広葉樹によって自然淘汰されます。それでも海岸林の植生であるリュウキュウマツが絶滅することはありません。
加計呂麻島において、計画どおりの伐採が進められると地元住民の生活、文化、産業、観光、景観、奄美諸島での中心的存在価値などに大きなダメージを及ぼすことは間違いないと憂慮しています。

(3) 伐採計画地にはルリカケス、アカヒゲ、リュウキュウイノシシなど多くの種が生息し、林道上では夜間の調査でアマミヤマシギを観察しています。
また、加計呂麻島には、常緑広葉樹林下の林床に生えるカケロマカンアオイ(絶滅危惧ⅠB類.奄美固有種、)、渓流沿いの苔むした崖地に生えるウケユリ(奄美固有種、絶滅危惧ⅠA類)が自生していますが、これら絶滅危惧の主な要因に森林伐採、道路工事があります。
奄美固有の多様な生態系維持のために加計呂麻島の山林は、保護すべき自然環境です。未舗装通路の舗装工事が行われていますが、これも即刻中止すべきです。

(4) 地元住民のみなさんが懸念している水源の枯渇、水の汚れは日常の生活に係わる深刻な問題です。これまでにも発生しているとのことですのでなおさらのことです。水源の枯渇、汚濁が河川や海域の生態系に深刻な影響を及ぼすことは言うまでもありません。
奄美の先人たちは、山の大切さと水循環の役割を、そして、人の生き方を「山や水おかげ、人や世間おかげ」と諭しました。

(5) 山林の伐採は、保水力の低下、表土の流出をもたらし、河川や海域にもろに影響します。風光明媚なリアス式海岸の大島海峡、無人島・岩礁を含めた数々の島々、手つかずの自然海岸への悪影響は必至です。
私たちは、平成21 年7月、海上から加計呂麻島をはじめ各島々を海上からベニアジサシ、エリグロアジサシの分布・繁殖を調査し、約800羽を数えました。伐採による表土流出によって、周辺海域が汚染され、餌になる小魚などが減ったとき、海鳥たちのにぎわいも消えていくことでしょう。
また、回復しつつあるサンゴ礁、クロマグロなどの養殖事業、シルナ(クビレオゴノリ)などへのダメージも懸念されます。

(6) 国指定の「諸鈍しばや」、朝日新聞選定の「にほんの里100選」、寅さんシリーズの撮影地、島尾敏雄文学の原点、戦跡、人間の温もりにみちた暮らしの原風景などから、加計呂麻島への関心は年を追うごとに「しま」の内外で高まっています。今回の件でも本土の各地から心配の声が頻繁に寄せられています。これらは、加計呂麻島の森、川、海域あってのことです。加計呂麻島は、瀬戸内町はもちろんのこと奄美にとって「宝の島」です。
かつて、島尾敏雄文学碑から岬への通路拡幅が計画されたとき、島尾文学の原風景を残すよう奄美の内外から反対の声があがりました。
このとき、瀬戸内町は計画を大きく変更する英断を下され、高く評価されました。もし、瀬戸内町当局が、民間の事業だからと伐採計画を傍観されるなら、悔いを後々に残すことになるに違いありません。
瀬戸内町の誇りうる自然の宝、奄美のかけがいのない財産を守るため、伐採させない決断を下さいますよう町長に強く求めます。
by amami-kakeroma | 2010-06-24 11:46 | チップ工場