参考 「住用町山間におけるチップ工場建設計画並びに森林伐採計画に関する請願書」

奄美市議会6月定例会で22日に採択された「チップ工場建設計画・森林伐採計画に関する請願」を掲載します。

                                                        2010年6月7日
  奄美市議会議長 様
                              請願団体代表
                               奄美市名瀬長浜町25-5
                               NPO法人環境ネットワーク奄美代表 薗博明

                               奄美の自然を考える会会長 當田嶺男
                               NPO法人奄美野鳥の会会長 鳥飼久裕
                               奄美哺乳類研究会会長 阿部優子
                               アマミアートプロジェクト代表 田町まさよ
                               森林伐採に反対する加計呂麻住民の会 橋口満廣
                               森林伐採とパルプ工場建設に反対する住用町山間地区
                               住民の会 碇敏憲
                               奄美大島観光協会会長 斉藤正道
                               紹介議員:
                                 蘇嘉瑞人、栄勝正、崎田信正、里秀和、
                                 師玉敏代、関誠之、平敬司、多田善一、
                                 戸内恭次、奈良博光、平田勝三、三島照、
                                 向井俊夫、(五十音順)

        住用町山間におけるチップ工場建設計画並びに森林伐採計画に関する請願書

拝啓 さまざまな課題が錯綜しているなかで奄美市発展のためにご尽力されていることに深甚の敬意を表します。奄美の特性を生かしたさらなる発展のために、なお一層のご尽力をされますよう期待しています。

さて、奄美の環境問題に取り組んでいる私たちは、加計呂麻島で計画された森林伐採について、計画を断念させるべく取り組んできました。同じ企業が今度は住用町山間でチップ工場を建設し、奄美大島ならびに加計呂麻島の森林伐採を計画して、4月29 日にメディアや環境団体を排除して山間集落住民のみの説明会をしました。私たちは、当該企業による伐採計画は、奄美の自然環境ならびに奄美固有の多様な生態系に深刻な影響を与えることは必定であると深刻に受け止めています。あわせて、奄美の先人たちが自然との係わり方の中で育んできた生活(ルビ:くらし)(文化)をも、ないがしろにする計画であると考えます。

奄美市議会におかれては、世界的に注目されている奄美の自然を保全・保護する立場から、今回のチップ工場建設ならびに森林伐採計画について慎重に判断され、将来に悔いを残さない対策を講じられるようれるよう請願いたします。

請願事項

1 説明会を再度行うよう行政指導をしていただきたい。
 今回の計画は奄美大島・加計呂麻島全域に関係する問題です。伐採計画地も明らかにしていません。奄美大島・加計呂麻島住民、環境関連団体、メディア関係等々、オープンな参加の下に説明会を開くよう要求するのは当然のことです。

2 奄美市議会におかれては、企業体に対して事業計画を断念するよう毅然たる態度で対応するよう行政に働きかけていただきたい。

理由

(1) チップ工場建設予定地は、住用湾湾口の岬(山間集落)に位置しています。住用湾の西側には鳥ヶ嶺・肥後山・金川岳が連なり、照葉樹林が茂る深い森を形成し、湾に注ぐ住用川、役勝川、山間川、戸玉川、金川、大川は清水を絶やすことはありません。湾奥には西表島に次ぐ国内第2位のマングローブ林が茂っています。
湾に面して並んでいる山間・戸玉・市集落は、森・川・海に抱かれており、奄美大島の集落形成の見本をみるような自然条件を備えています。

(2) 住用湾を抱く周辺一帯は「特有の生物相を有し、世界的にも注目されている」(環境庁自然保護局)奄美の中で、湯湾岳一帯と並んで特段に多様な生態系が賑わっている地帯です。奄美大島の自然環境の保全・保護のために、そして、奄美の将来のためにも最大の配慮を払わなければならない地帯です。にもかかわらず、奄美で絶滅が危惧されている種のほとんどが当地帯に生息しており、すでに憂慮すべき事態になっています。

アマミノクロウサギなどを原告にした奄美「自然の権利」訴訟で裁判所は、判決文の中で「個別の動産・不動産に対する近代的所有権が、それらの総体としての自然そのものまでを支配し得るといえるのかどうか、あるいは、自然が人間のために存在するとの考え方をこのまま推し進めてよいのかどうかについては、深刻な環境破壊が進行している現今において、国民の英知を集めて改めて検討すべき重要な課題」、「原告等の指摘した『自然の権利』という観念は、ひと(自然人)及び法人の個人的利益の救済を念頭に置いた従来の現行法の枠組みのままで今後もよいのかどうかという極めて困難で、かつ、避けては通れない問題を我々に提供した」と述べています。

歴史的と云われるこの判決の指摘は、環境問題が重要な政治課題になっている今日、国際的な潮流になっています。

【参考1】伐採計画地と言われている地域で絶滅が危惧されている種は、
<哺乳類>アマミノクロウサギ(絶滅危惧ⅠB類、特別天然記念物)、ケナガネズミ(絶滅危惧ⅠB類、天然記念物)、アマミトゲネズミ(絶滅危惧ⅠB類、(絶滅危惧ⅠB類、天然記念物)、アカヒゲ(絶滅危惧ⅠB類、天然記念物)、オーストンオオアカゲラ(絶滅危惧ⅠB類、天然記念物)、アマミヤマシギ(絶絶危惧Ⅱ類)、カラスバト(準絶滅危惧、天然記念物)、
<両生類>オットンガエル(絶滅危惧ⅠB類、県天然記念物)、イシカワガエル(絶滅危惧ⅠB類、県天然記念物)、アマミハナサキガエル(絶滅危惧Ⅱ類)、リュウキュウイボイモリ(絶滅危惧Ⅱ類、県天然記念物)、シリケンイモリ(準絶滅危惧)、
<魚類>リュウキュウアユ(絶滅危惧ⅠA類).

以上の他に当該地域に生息している鳥類等をおおよそあげると、

<鳥類>アマミヒヨドリ、アマミヤマガラ、アマミシジュウカラ、リュウキュウサンショウクイ、リュウキュウキビタキ、リュウキュウアカショウビン、リュウキュウサンコウチョウ、リュウキュウメジロ、リュウキュウコノハズク、
リュウキュウアオバズク、リュウキュウズアカアオバト、リュウキュウキジバト、リュウキュウツバメ、リュウキュウハシブトガラス、シロハラクイナ、カワセミ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、アオサギ、クロサギ、ゴイサギ、リュウキュウヨシゴイ、セイタカシギ、イソシギ、キアシシギ、アオアシシギ、カワウ、カイツブリ、サシバ、ミサゴ、リュウキュウツミ、カルガモ、マガモ、ヒドリガモ、コガモ、

<爬虫類>オキナワキノボリトカゲ、ヘリグロヒメトカゲ、バーバートカゲ、オオシマトカゲ、アオカナヘビ、メクラヘビ、アマミタカチホヘビ、アカマタ、ガラスヒバァ、ヒャン、ヒメハブ、ハブ、

<両生類>アマミアオガエル、ハロウェルアマガエル、リュウキュウアマガエル、リュウキュウカジカガエル、ヒメアマガエル、イボイモリ、

<マングローブ林>ミナミコメツキガニ(数万匹)、オキナワハクセンシオマネキ、ヒメシオマネキヒ、ベニシオマネキ、アカテノコギリガザミ、シレナシジミ、ミナミトビハゼ、ベンケイガニ、ハマガニ、クロベンケイガニ、ヨシノ
ボリ類、テナガエビ類、ヌマエビ類、ボウズハゼ、ツムギハゼ、フタバカクガニ、オサガニ類、チゴガニ類、アシハラガニ、ツノメガニ等々.

(3) 住用村山間集落での説明会では、チップ工場関連、運搬手段、加計呂麻島の伐採を進めるなどの説明で、奄美大島での伐採予定地については、質問があったにもかかわらずこれに答えていません。山間のチップ工場には1日に10台チップ運搬車で運び、月に3回運搬船が出入りするとしか云っていません。企業の社会的責任のかけらも感じられない説明に憤りを禁じ得ません。
瀬戸内町の大島側から住用町にかけての数カ所で大規模な伐採が計画されているとの噂を聞くにつけ事態を深刻に受け止めています。

(4) 山林の伐採は、保水力の低下、表土の流出、林床へのダメージをもたらし、河川や海域にもろに影響します。多様な生態系は分断・破壊され、河川や住用湾の汚濁は避けられないでしょう。奄美最大のマングローブ林とそこに生息する生物への影響も大きいでしょう。伐採がもたらすダメージはこれまでに幾度となく指摘されています。

(5) 戸玉集落の悲劇を繰り返すような行政措置にならないよう、万感の思いを込めて要請いたします。
山間集落の隣にある戸玉集落住民は、採石業をめぐって30 年近くにわたって被害に泣き、不安を募らせ憤懣やるかたない日々を送ってきました。
土砂崩落の危険が明らかになってから社会的注目を浴びるようになり巨額を投じる羽目になりましたが、同様の過ちを繰り返すことがないよう心から願ってやみません。
いったん破壊された環境は、巨額を投じても復元できない場合がほとんどです。生態系の破壊にいたってはなおさらのことです。

(6) 住用湾奥一帯のマングローブ林とそれに連なる河川・森林は、観光客や調査・研究者の多くが訪れる奄美での一級の地です。地域産業振興の面から考えても、また、沖縄では一度絶滅したリュウキュウアユへの影響等から考えても、環境保全に細心かつ最大の配慮をすべき地域です。

(7) いみじくも、2010 年は国連が定めた「国際生物多様性年」の年です。
そして本年は、生物多様性条約第10 回締約国会議(COP 10)が、名古屋で日本国をホストに開催され、「2010 年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」の検証と、これからの枠組づくりを討議します。

(8) また、鹿児島県は、世界自然遺産への登録をめざして取り組んでいる最中です。行政・住民共々に、環境問題に対する責任が問われているように思えてなりません。

【参考2】奄美諸島を含む南西諸島について、「平成2年度南西諸島における野生生物の種の保存に不可欠な諸条件に関する研究報告書」(1991 年3 月環境庁自然保護局)は、次のように述べています。

◇「亜熱帯林、マングローブ林、珊瑚礁などが展開するこれらの島嶼は『東洋のガラパゴス』とも称せられ、…」(はじめに)
◇「隔離された島嶼において特有の生物相を有し、固有の種または亜種に分化してい
るものが多いという点で世界的にも注目されている地域である。しかしながら、このような孤立した島嶼生態系では、生物種が容易に絶滅する要因を数多く含んでいる。」(p1)
◇「今後、南西諸島は地球環境の大きな変化が予想される中で、きわめて重要な植生や生態系変化の指標になる重要な位置にあり、このような地域では植生の総合的な保全が必要である。」(p6)
◇「森林の破壊、海岸線の汚濁・改変が小さな島の生態系に大きな問題となっていることが浮き彫りできた」(p10)

※ 同主旨の「申し入れ書」を奄美市長ならびに鹿児島県知事宛に提出したことを申し添えておきます。
by amami-kakeroma | 2010-06-24 11:30 | チップ工場 | Comments(0)